学生アルバイトをまちうける罠の巻
そんな罠にはまったのが、当時学生だった井上君である。
もともとパプアニューギニアのような未開の地に興味を持っていた彼にとっては、
電気もないようなところに行くのも苦にならずむしろ地方での生活を満喫しているかのようでもあった。
そんな彼にも息抜きのためにポートモレスビーでの文明とのふれあいをさせていたが、あるとき
ポートモレスビーの宿舎で悲惨な出来事に遭遇するのである。
この時も私はテレビ取材の同行でポートモレスビーをあけていたのだが、この間隙をぬってまさに
悲劇が彼に襲いかかったのである。
ある晩いつものようにのんびりとくつろぎ休んでいると、表の方がちょっと騒々しくなって来た。
どうも誰かが言い争いをしているらしい、しかしその声が次第に近づいてくるではないか、
息を潜め部屋の角に隠れているとまさにその時、大きなもの音と共に玄関のドアに何かがか叩き付けられた。
大声と共に玄関が激しく叩かれる、恐怖におびえただ一人部屋に隠れる井上君、玄関を叩く音は次第に激しさを増す。
いずれ玄関は打ち壊され押し入られてしまう、どうする、このままここに隠れていても逃げ場はない、
玄関が打ち壊されるまでのはかない運命か。打ち壊されるまで待っていては相手の反感を買うばかりで
はないか、いっそのことこちらから玄関を開け、出来るだけ愛敬を振りまいてみては、勝負に出た。
ついに玄関を開ける決心をしたのである・・・・・・。
獣と化した男は家に入ると異常に興奮した様子でわめき散らす、そして一歩また一歩と詰め寄る、ついに運命の時が来た。
男は彼の横をすり抜けると部屋から部屋へ誰かを探しているようだ。そして、目的を果たせなかったかの ように肩をおとしだまって立ち去ってしまった。
部屋は何事もなかったかのように静寂が訪れ、あとには呆然と立ちすくむ彼一人。
なんだったんだ・・・・・。
そんな経験をもつ彼も今ではまっとうなサラリーマンである、無事でよかった。